私が新築を選んだ理由

住宅兼治療室を新築することにした鍼灸師が、計画から完成後まで、家にまつわるあれこれを書き記します。
皆様がより健康で快適に過ごせる住宅を考える上で必要なことがらを、家の性能、お金、ライフスタイルなど様々な方向から検討します。
※2022年~2023年時点でのお話となりますので、今後の経済情勢や建材の進化・改良などにより不適切な情報となる可能性もあります。
十分にご留意の上でお読みください※


こんにちは。
この記事では「私が新築を選んだ理由」について書くことにします。

まずは端的に申し上げましょう
・テナントと住まいの家賃を払い続けるのがもったいなく感じてしまったから
・寒い住まいが体に与える影響を考えるようになったから
・間取りの自由度

主な理由はこの三点です。

ひとつめはわかりやすいですね。おそらくほとんどの方が同意くださることでしょう。
2022年1月に結婚し、それまでは津山院のために借りていた物件だけで済んでいたところ、新生活のためにアパートを借りることになりました。
治療院の家賃に、アパートの家賃。さらに二件分の光熱費がかかります。光熱費は基本料だけでも倍額ですので、月に3~4千円は多いですね。
そしてアパートは二人暮らしには良いものの、ではここで一生ずっと生活するのかというとそんなイメージも持てず。

しかしこの理由だけであれば、「中古住宅でもいいじゃないか」となります。新築にするという理由には少し弱いのですね。金銭面で言えば中古住宅でも良いわけですから。

そこでふたつめの理由、「寒い住まいが体に与える影響を考えるようになった」という点についてです。
妻は県南の暖かい地域出身で、結婚して津山に来たのが1月という寒さの底の時期でした。
もともと寒さに弱いこともあり、引っ越してきてからも家の中まで寒い、寒さで首や肩がこると愚痴がこぼれることがほぼ毎日。
そしてひとつめの理由から家探しを始めていたことで、あるモデルハウスを見学させてもらったこともこの考えの後押しになりました。
そこでは「冬でも家全体を暖かく保つことで、浴室やトイレといったところで起きやすいヒートショック現象を格段に減らすことができる」との説明がありました。
それまでなんとなく言葉としては知っていたものの、自分は鏡野の寒い環境で育ってきたこともあり、「お風呂や脱衣場なんて寒いのが当たり前」となっていたのであまり自分事としては考えてきませんでした。むしろ寒い冬に、寒い脱衣場から温かい湯船につかることの気持ちよさと言ったらもう…!という感覚すらありました。

しかし妻の体調の話もあり、私自身も治療家として「寒さにあたるのはほどほどに」「暖かくして過ごしてくださいね」と皆さんに声をかけていることに、今更ながら思い当たったわけです。

お風呂場でのヒートショックによる死者数は、推計ですが年間1万7千人とも、1万9千人ともいわれます。
熱中症が年間7百人程度、交通事故が3千人前後の死者数ということですから、自宅(お風呂場やトイレ)で倒れる人が意外なほど多いことがわかりますね。
参考:STOP!ヒートショック ヒートショックによる死亡数
2020年の交通事故死者数は2839人、統計開始以来最小を更新し初めて3000人を下まわ

私が子供のころ、約30年前は交通事故による死者数が年間で1万6千人を超えていたようです。
それが飲酒運転の厳罰化や車の安全性能向上などにより、交通事故で亡くなる方は8割以上も減ったことになります。

今後さらに高齢化していく日本において、自宅内のヒートショック現象による死者数は増加すると思われます。
そして国はここに重点的な対策をしてくることも想像できますし、すでに始まっている点もあります。これからさらに住宅の基準値の改正や、最低限の住宅性能の引き上げなどがなされていくと思います。

少し話がそれましたが、住宅性能の話を聞いていくに従い、寒暖差が少ない家を求めることは時代の必然になってきていることに気が付いたわけです。

そしてこの時点で、中古住宅という選択肢が消えました。最初のお金は中古住宅よりかかるけれども、住まいの快適さと病気のリスクが減少する選択をしようと決まったわけです。

また温度差だけではない、カビやダニといったものもこの「より健康に過ごす」という要素として無視できません。
アレルギーを起こしたり、酷くはなくともかゆみなど不快な症状を引き起こすものですので、カビやダニが発生しにくい住宅を求めることにしたのです。
寒暖差については断熱性能と気密性能、カビやダニについては湿度管理性能が特に影響します。
建材の改良と住宅建築への考え方の変化、空調設備機器の進化によって、これら健康を損なうリスクの高いものをかなりのところまで排除できる住宅が、現在では可能になっているのです。

最後に「間取りの自由度」という点です。
鍼灸院は「保健所から開設許可を得た医療施設」ですので、それなりに法律の縛りがあります。
最低限の広さ、消毒設備の有無、施術室と待合室は独立した部屋であること、そして住居と出入口を分けなければいけない、などです。
中古住宅ではこれらを満たすことができず、リフォームなどするにしても結局は新築同様かそれ以上の金額になるということで。
であれば住宅性能を担保できる新築にしよう、という結論です。

今回は私の場合はということでお話をしてきました。
これから住宅を検討する人には、それぞれの事情があることでしょう。経済面、家族関係、仕事関係などなど…様々な要素を考えたうえで最も適したものを選ぶことができるといいですね。

もうひとつ。
東洋医学や東洋思想の観点からすると「高性能住宅に住むこと」や「新築するということそのもの」は理に反するようにも思えます。季節による影響を考慮するのも東洋医学のうちですから。
しかしそれを言ってしまえば、「では江戸時代や、もっと古代の暮らしにまで戻るのか」という問いには答えなければなりません。
自然派の暮らしをしたい人も、電気やガスを使い、車を使って生活しているのが実情ですから。

住まいを快適にして心身の負担を減らすことで、より健康に生きることができる。

これはむしろ人類が大昔から求め続けてきた自然な姿であって、何もそのことに抵抗する必要はありませんね。
東洋医学の治療も、現代の生活に合わせてその内容は少しずつ変わっていっています。変化していくことが自然な姿なのですね。
今回はこのあたりで。次回記事もお楽しみに。

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