持ち家か賃貸か、新築か中古か②

住宅兼治療室を新築することにした鍼灸師が、計画から完成後まで、家にまつわるあれこれを書き記します。
皆様がより健康で快適に過ごせる住宅を考える上で必要なことがらを、家の性能、お金、ライフスタイルなど様々な方向から検討します。
※2022年~2023年時点でのお話となりますので、今後の経済情勢や建材の進化・改良などにより不適切な情報となる可能性もあります。

十分にご留意の上でお読みください※


前回記事「持ち家か賃貸か、新築か中古か①」の続きです。

次に新築か中古かを考えたとき、大きな違いはこちらもやはりコストのかかりかたでしょう。人によりどちらも正解になり得るところですので、自分や家族の価値観とよく相談して選ぶことが大切ですね。

おそらくですが、ほんの数年前までは家を買うと言っても施主があれこれと考えることはほとんどなく、せいぜい間取りと立地と「ローンの支払額が妥当かどうか」という点くらいだったのでしょう。
ですが今では残念なことに、簡単に快適な家が手に入る確率はとても低いというのが現実のようです。
家を買うときは、とにかくコスト面について考え抜く必要があります。でなければ生涯で数百万円、数千万円の違いが出てきかねないからです。

コストと言っても購入時にかかる初期(イニシャル)コスト、日々の生活にかかるランニングコスト、一生涯で支払うトータルコストを考える必要があります。
まず私が考える新築と中古のメリットデメリットはと言いますと、

メリット デメリット
 

新築住宅

・家の性能を確保しやすい(冬に寒くない、夏に暑くない、耐久性が高い等)
・デザイン、家事導線など暮らしの満足度が上がりやすい
・性能の高い家であればランニングコストが安い
・初期コストが高くなりがち
・計画から引っ越しまで時間がかかる
・気軽に引越しできない(隣人トラブルなど)
・家族構成の変化に対応しにくい(離婚、子供の一人立ち、親の介護等)
 

中古住宅

・初期費用が新築に比べて安い(物件価値の下落、税金や新築時の諸費用除外できるなど)
・リフォーム、リノベーションにより部分的には快適にできる。
・引っ越しまでの期間が早い
・家の性能が担保されていない(築浅物件でも2023年時点で求めたい性能はほぼ満たしていない)
・低性能なのでランニングコストが高くなりがち
・家事導線の不自由さなどは賃貸と変わらない可能性が高い(水回りの配置などは変更しにくい)

おおよそ上記のようにまとめられます。

違いは「コストがかかる時期」です。

一般的に新築は中古に比べて初期コストは高いものになります。世間の多くの人は「安いほうがいい」と、安易に住宅に安さを求めてしまいがちですが、ここは一度立ち止まってしっかり考える必要があるところだと思います。
特に日々の生活、ランニングコストという面からみると新築の方がはるかに安くすることが可能で、生涯で家に支払うトータルコストは同じくらいに落ち着くのではと考えています。実際には、何年くらいその家に住むのかという期間の長さが問題になるのですが、ここもかなり説明が長くなるので一旦割愛します。
最終的に生涯で支払うトータルコストが同じくらいになるのであれば、初期費用を頑張れるだけ頑張って、できるだけ性能の高い快適な家を選んだ方が日々の満足度は高くなるのではないでしょうか。ここは私が新築を選んだ理由の一つでもあります。

ランニングコストに挙げられるのは「修繕費」と「月々の光熱費」ですね。
修繕費は新築にしても中古にしても必要で、家は必ずメンテナンスしていかないといけないものです。
壁材、屋根材、工法の違いや日射その他環境要素によってメンテナンス頻度は変わりますのでコストの比較はとても難しいのですが、新築にしても中古にしても、10~15年に一度は何かを直すために100万円、200万円といったまとまった出費を備えておかなければいけません。中古を購入した場合は、購入時点で何かを直してから住み始めるといったこともあるかもしれませんね。それはランニングコストというよりイニシャルコストです。

新築と中古の違いが大きく出るのは光熱費です。

光熱費は電気、水道、ガス、灯油といった生活に必要なエネルギーに支払うお金ですね。
これは年々少しずつ上がっていく傾向にあります。緩やかなインフレは正常な経済の発展ですからね。
ですが特にと言いますか、ここ1年程度の電気代の値上がりはご承知の通りで、経産省の試算では今後も年3%程度は上がっていくとされています。
住宅を高性能化することでかかる初期コストと、それによって30年間~40年間節約できるランニングコストを比較して、生涯で払うトータルコストを少なくできる選択をするのが、最も賢い住宅の買い方であると考えます。
参考:高性能住宅の建築費とランニングコスト

断熱性能、気密性能などが低い住宅を選んでしまった場合、せっかく買った家なのに「暑い」「寒い」が当たり前で、光熱費を抑えるために一生懸命節約し続ける日々を送ることになってしまいます。

日本の住宅性能は先進各国に比べて著しく低いそうです。それがここ数年で大きく変わり始めました。ようやく世界の標準に追いつこうという流れができてきつつあるそうです(それでもまだまだ遅れているとのこと)。
2023年時点では「断熱性能(UA値:外皮平均熱還流率)」という言葉が大流行りです。というのも、国が定める住宅の断熱性能基準が4段階から7段階へと引き上げられ、これまで4が最高だった断熱等級は7が最高となりました。
そのため今後の住宅業界においては「うちは断熱等級5ですから光熱費は少なくなりますよ」「うちは断熱等級4(過去の最高基準 )でして、それでも十分なんですよ」といった「断熱等級に特化した営業」がしばらく続くことでしょう。
光熱費は断熱等級だけで決まるものではないので、営業トークに惑わされないようにご注意ください。

UA値など住宅の性能を表す数値は、結局どの程度のものが必要なのか。
これはHEAT20という基準がよい目安になります。国の省エネ基準とは少し違う観点からまとめられたさらに厳しい基準で、G1~G3まであります。
既存の住宅のほとんどはG1にも満たない性能、だそうです。
私の意見としてはHEAT20のG2以上を求めたいところです。日本のどこの地域に住むかによって、同じ性能値でもG1だったりG2だったりするのですが、岡山県の津山市、鏡野町といった冬の冷え込みの厳しい土地ではG2レベルが欲しいなと思います。
ちなみに暖房費の試算があるのですが、従来の一般的な性能の住宅では7万円/年とすると、G2住宅は3.5万円/年とほぼ半分になるそうです。暖房費だけでこれです。
さらに高性能化することでトイレやお風呂といった部屋の温度差も少なくなり、健康リスクも減ることが報告されています。心筋梗塞などのリスクが減るということは、経済面での恩恵は計り知れないですね。

中古住宅でも内窓を追加したり、床下や天井裏に断熱材を追加するなどして性能を上げることはできますが、総じて新築より高コストになりがちです。
であれば新築時によく検討して十分な性能を備えた住宅にしたほうが、経済的にも健康面でも良い結果になりそうですね。

新築と中古の比較を、主にお金の面からみてきました。
よほど初期費用が限られてしまう場合を除いて、私は新築を推します。むしろ参考にした松尾設計室のブログにもあるように、ある程度の住宅性能を備えた家を買えないという家計状況であれば、住宅購入の計画を延期する方が良いと考えています。
家は自分と家族の生活を守ってくれるものでなければいけません。
性能が十分でない家を買ってしまうことで、温度差やカビやダニに起因する健康リスク、光熱費が高くなることによる経済リスクを負ってしまいます。家を買ったと言っても、これらのリスクが今よりも上がってしまうのでは全く意味がありません。

家の購入を考えるとき、間取りやデザインが優先されるのではなく、目には見えない住宅の大切な役割をしっかりと考えることをぜひ優先してください。
目に見えないものが大切、というのは東洋医学の氣も同じですね。
見えないけど役割がある。ないがしろにすると健康を損なうものです。

治療と家と、こんな共通項もあるようです。

次回は私が新築を選んだ理由や、ハウスメーカーの選び方など書いていくことにしましょうか。
ではまた。

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