当院では、「脉診流経絡治療(みゃくしんりゅう けいらくちりょう)」という治療方法を主に採用しています。
治療を受けていただいた方にはわかるのですが、
脉診とは、主に手首で触れられる脈を診察することで身体の情報を探ることを言います。
実はその前段階の問診などで身体の状態にあたりを付け、それを脉で確認していく、という作業をしているのですが。
鍼灸師の勉強会では脉の診方を細かく練習していくのですが、
ここでは「脉で何を診ているのか」を解説します。
「こんな治療のやり方もあるんだー」とか、
「そういう考え方で身体にアプローチしてたんですね」
といった感じで、ゆるく読み物として読んでいただければ嬉しいです。
これを読んでくださった皆様の、医療の選択肢が広がることを願います。
さて、脉の話です。
東洋医学では、私たちの身体を動かしている、目には見えないエネルギーのことを「気」と名付けました。
「頭が痛いのは、ここを巡っている気の詰まりがあるからだ」とか、
「腰が痛いのは、ここを巡っている気が充満しすぎて余計なはたらきになっているからだ」とか、
「胃のもたれが不快なのは、ここを巡っている気が不足しているという警戒信号だ」とか…。
自然の変化を観察することで「気」という概念を想定した古代中国の人々は、それを人の身体にもあてはめ、
「気」の状態が変化することで私たちの身体も変わるという「事実」を積み重ねてきました。
そして、身体観察を積み上げ、「いくつかの場所に全身の状態が反映されている」ことを突き止めました。
顔とかお腹とか、耳とか手とか…そういったところです。
そして、手首の脈にもそのような考えが当てはまるという事実に行き着いたと考えられます。
病気の時は、脈はこんな状態
それが良くなっていくと、こういうふうに変化する…
そういった観察を積み重ねて、「こういうときはこんな脈の状態になる」ということをまとめていったのだということです。
脉を診るときに何を診ているの?と、時々尋ねられます。
答えは「あなたの気の状態」となるのですが、ものすごく曖昧な答えで恐縮です。
目に見えないし、「気」そのものは触れることはできないし…
ただ、その気の状態を反映している場所が手首の脈ということで、
そこを観察することで「今、あなたの気の状態がどうなっているの?」とみせて頂いているのです。
およそ一般論として、ですが…
ゆっくりした脈であれば冷えが入っているのかなとか、
早い脈であれば熱があったり、発熱はしていなくても体内に熱がこもっているのだろうとか、
脈の形が緩んでいたり崩れていたりしているときは、疲れで消耗しているのだろうとか、
表面が力なくて底のほうで力がある場合は、日中も眠いんじゃないだろうかとか、
固く緊張した脈のときは、痛みが強いのだなぁとか
脉がこういう状態であれば身体はこういう状況下にあるだろう、ということが経験的にわかっているわけなのです。
脉の状態を診させて頂くことで、
その時その時のあなたの身体の気の状態を知り、
問診でうかがった内容も併せて、身体の状態を考えます。
どこの気が不足しているのか
身体の働き(五臓六腑のはたらきのバランス)のうち、何が気のめぐりを滞らせているのか
あなたの暮らしの中で、何があなたの身体に余計な働きをさせているのか
そういったことを考えます。
その上で
不足していれところは補うし、
滞っていれば詰まりを取って流すし、
気が集まりすぎて余計な働きになってしまっている場合は、その余分なものを取り除いたり。
そういったことを鍼(はり)とお灸でもってやっているのが、東洋医学を基にした鍼灸治療なのです。
もちろん目指すのは中庸(ちゅうよう)
全身に平らかに気が伸び伸びとめぐっている状態、ですね。
東洋医学はバランスの医学なので、
右も左も上も下も中も外も前も後ろも、全部きれいにバランスよく気が巡っている状態を目指します。
全て均等に、というのとも少し違うのですが
このあたりはまたの機会に。
ではまた。